この相場は、従来の金融市場からの流動性供給ではなく、AI主導の民間資本によって形成されている新たな「流動性主導型」強気相場です。
FRBによる金融引き締めや財政刺激策の減退にもかかわらず、リスク資産相場は上昇基調を維持しています。その理由は、経済の最上層に位置するAI分野で生じるキャピタルゲインや大規模な設備投資が、経済全体へ波及し、暗号資産トレジャリー企業(TCo)が革新的な伝達経路を構築することで、株式市場の好材料がオンチェーンの買い圧力へと瞬時に変換されているためです。
このフライホイール構造は、ハイパースケーラーによる設備投資が減速したり、ETF需要が明確に頭打ちとなるまで、市場のノイズや季節性の弱さを乗り越えて持続するポテンシャルがあります。
画像提供: https://x.com/lanamour69/status/1957087662105415896
ポイントは3つです
- 流動性の供給源が転換:FRBや財務省によるものではなく、AIハイパースケーラーの株価上昇と大規模な設備投資が資金の源泉に。NVDAやMSFTによるウェルス・エフェクト、および1,000億ドル超規模の投資マネーが労働者、サプライヤー、更には個人投資家の資産へ波及し、リスクマネーが暗号資産へと流入している。
- 暗号資産市場の新たな大口買い手:TCo(BTCの場合はMicroStrategy型、ETHはBitmine等)が上場株式市場の資本を現物トークンに橋渡しし、前回サイクルには存在しなかった構造的な買い手となっている。
- 当面のマクロ逆風は許容範囲:インフレ持続リスク(関税や賃金、ドル動向)や労働市場のソフト化がデータに現れつつも、AIによる生産性向上の期待と暗号資産規制緩和がリスクプレミアムの圧縮維持に貢献している。
1) ピラミッド頂点で進行するAI
- キャピタルゲインとリスクローテーション:S&P500が十分に割高となり、小規模投資家は利益の出ていないテック株やショート・バスケット、暗号資産へと資金を回す傾向が顕著。
- 設備投資=流動性:ハイパースケーラーの過去最大規模の設備投資が、民間主導の流動性ポンプとして機能し、ベンダーや労働者、株主に現金が流れ、その一部が市場に還流。
- 副次的効果:AIインフラ構築(データセンター、半導体、電力インフラ)は現時点では投資拡大として、将来的には生産性向上として現れる。この間のタイムラグが、迅速なウェルス・エフェクトを生む要因に。
2) TCo = DATs
- 「Gen 0」から価格追求型TCoへの進化:初期TCo(Saylor型)は価格に鈍感な下値サポートだったが、新世代のETH重視TCoは価格形成に積極的関与し、株価上昇を促進する場面で重要な価格帯を守り、戦略的なブレイクアウトを行う。
- 反射的ループ:株式発行→準備資産(BTC/ETH)取得→トークン価格上昇→TCo株価上昇→資本調達コスト低下→この循環が繰り返される——これがフライホイールの本質。
- 弱点:サポートされていない価格帯。ETFや個人投資家がこの「隙間」を埋めきれない場合、ブレイクアウト失敗でTCoは資金温存を余儀なくされ、価格も早期に巻き戻る。
3) 政策・ポジショニングの追い風
- 暗号資産規制緩和と前向きな政策スタンスが、伝統金融からの資金流入パイプラインを解放。
- 関税問題「解決」は見せかけ:企業は中国・メキシコ・カナダ・USMCA、それぞれの関税・例外・裁判動向へ依然として先行き不透明感が強く、設備投資より金融資産への資金流入が優先されており、これが資産価格の上昇要因につながっている。
イーサリアムの現状と転換の背景
- トレジャリー需要とETF資金流入が、L2ネットワークに遅れを取っていたETHのマーケットストーリーを書き換えた。
- 「カップ理論」観点では、価格志向のETH TCoが3,000ドル、3,300~3,500ドル、4,000ドル帯を戦略的にサポートし、ETFがその間を埋めている。約270億ドルの滞留需要が段階的に顕在化すれば、次の上昇トレンドの拡大が期待できるが、流入がなければ流動性ギャップが重要リスクとなる。
- 現状認識:ETHの買い手構造は過去サイクルから大きく様変わり。もはや「小口 vs マイナー」ではなく、「ETF+TCo vs 流動性ギャップ」の構図となった。
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マクロ:ウォール・オブ・ウォーリー(警戒の壁)と、その克服理由
インフレ
- 調査ベースの価格圧力:販売価格指数が3ヶ月連続で上昇し、2022年8月以来の高水準。関税転嫁・ドル安・賃金上昇が米国物価上昇圧力の主因となっている。
- 示唆:インフレ率は概ね4%で危機的水準ではないが、利下げを難しくする要因。FRBは労働市場が大きく悪化しない限り、成長寄与型のインフレを容認し得る。
労働市場
- 若年層の不完全雇用率が高止まり(3ヶ月平均約17%)と、景気循環初期の警告サイン。若年層の雇用情勢の悪化が労働市場全体に波及すれば、リスク市場にも波及。
成長・債務・AI
- AIによる財政インパクト:全要素生産性が数十年にわたりベースライン比+0.5%で推移すれば、2055年の政府債務/GDP比率はベースライン156%から約113%まで改善、実質一人あたりGDPも17%上昇。AIだけが、米国債務曲線を持続的に引き下げ得る唯一の成長ドライバー。
- ただし時差に注意:1980年代のコンピュータ投資が、90年代後半の生産性ブームへとつながったように、技術の浸透には時間を要する。市場は将来の効率アップを先取りし、織り込んでいる。
関税と不確実性
- 政策不透明=評価リスク増加:関税率の決定遅延、EU・日本との曖昧な合意、免除の流動化、法的係争が先行コストカーブの見通しを曇らせ、CFOは物理的な長期投資よりも金融資産への投資を優先傾向。市場支援要因だが、中期的インフレリスクも内包。
ベア(弱気) vs ブル(強気):私のスコアカード
弱気材料
- TGAの資金枯渇とQT継続で依然として金融環境はタイト。
- 9月に向けての季節要因の弱さ。
- 労働市場の初期減速やインフレ再加速(関税・賃金)が懸念材料。
強気材料(オーバーウェイト)
- AIによる設備投資とウェルス・エフェクトが現代の流動性供給源。
- 暗号資産政策シフトで伝統金融資金の流入加速。
- TCo/ETF構造による恒常的大口買い手の存在。
- 2026年のFRB構成変化によるハト派方向への期待感。
総括:AI→個人投資家→TCo→スポット市場という資金循環が続く限り、私は強気スタンスを維持します。
考えを改める条件
- ハイパースケーラー設備投資が減速——AIインフラ新規発注の明確な鈍化。
- ETF需要の停滞——資金流出が続く、または新規ETF立ち上げが失敗。
- TCo株式調達環境の悪化——ダウンラウンドやATM失敗、NAVプレミアム崩壊。
- 労働市場崩壊——若年層の弱さが中核雇用層に波及した場合。
- 関税ショックによるCPI急騰——物価高騰でFRBが再び金融引き締め。
サイクル期のポジショニング(投資助言ではありません)
- 中核:高品質AIコンパウンダー、計算資源・電力・ネットワーク等「ピック&ショベル」を厳選して保有。
- 暗号資産:BTCをベータ資産、ETHを反射的なフライホイールと見なす。守られた水準を尊重し、その間の流動性ギャップに警戒。
- リスク管理:ETF資金フローやTCo発行スケジュール、ハイパースケーラーの指標を注視し、防衛水準で追加投資、期待先行で根拠のない急騰時はポジションを縮小。
まとめ
本サイクルは2021年時と明確に異なります。
AI関連株の値上がりと設備投資による民間流動性が、新たな企業構造を通じて暗号資産市場に波及し、ETFが資金流入を後押ししています。
このフライホイール構造は現実であり、ピラミッド頂点(ハイパースケーラー)が減速するまで回り続けるでしょう。
それまでは、市場の上昇基調(右肩上がり)が続く見通しです。👇🧵
Macro Pulse Update 2025年8月16日号:主なトピック
1️⃣ 今週のマクロイベント
2️⃣ Bitcoin Buzz Indicator
3️⃣ マーケット概況
4️⃣ 主要経済指標
5️⃣ 中国動向
1️⃣ 今週のマクロイベント
先週の動き
次週の展望
2️⃣ Bitcoin Buzz Indicator
3️⃣ マーケット概況
- インフレデータとビットコインの動向:7月CPI(消費者物価指数)は2.7%で予想通り、市場に安心感が広がりビットコインは史上最高値124,000ドル超まで急騰。しかしPPI(生産者物価指数)は0.9%と3年ぶりの大幅上昇で、生産者コストの高止まりを警戒。消費者物価低下と生産者コスト上昇の綱引きが、BTCのマクロ感応度の高さを物語る。
- ETH ETFが機関投資家参入の節目に:米現物ETH ETFは1日当たり10億ドル超の過去最大資金流入(BlackRock・Fidelity主導)。累計流入108億ドル超でETHの機関資産化が着実に進展。流動性ステーキング規制明確化も追い風。ETFを軸としたETH独自の成長相場が始まる可能性がある。
- BitMineの強気トレジャリー戦略:株式資本プログラムを245億ドルに拡大、ETH保有は115万ETHを突破。BitMineは最大の公開ETHトレジャリーとして流動性・ガバナンス面で重要プレイヤーになりつつある。大口集中による市場構造への影響にも注目が集まる。
- Bullish社のIPOが機関投資家需要を証明:Bullishは11億ドル規模IPOで発行価格比143%の急騰スタート。Peter Thiel・ARK Investの後押しもあり、伝統金融とデジタル資産を結ぶ高付加価値インフラへの機関投資家の高い期待感が伺える。
- ALT5 Sigmaはオルタナティブ・トレジャリーへ:ALT5が15億ドル規模のWorld Libertyトークンを発行し、Eric Trumpの取締役就任も話題。他とは異なり、企業トレジャリーがBitcoin・Ethereum以外のガバナンストークンにも注目。分散投資か焦点の希薄化かは今後の検証事項だが、企業主導型クリプト戦略への関心は拡大中。
- 「Do Kwon判例」:Do Kwonの有罪答弁は暗号資産創業者にとって転換点となる事例。従来グレーゾーンだった業界が、今や伝統金融と同レベルの市場操作・詐欺規制に晒されることが示された。
4️⃣ 主要経済指標
生成AIと米国経済成長
- 投資vs生産性:2025年上半期、IT機器投資(主に生成AIインフラ関連)が実質GDP成長の59%を占拠。生成AIは投資・評価を押し上げているが、広範囲な生産性改善には至っていない。
- 投資構造の変化:従来型の工場・オフィス・リテール投資は減少する一方、データウェアハウス投資が急増しAIの存在感を強調。関税不透明感が他の設備投資を遅延。
- 市場動向:生成AIの熱狂はドットコム時代を彷彿とさせる。「マグニフィセント・セブン」がS&P500の伸長を主導。景気減速でハイテク株の換金売りが波及すれば相場調整への懸念も。
- エネルギーへの影響:AI駆動のデータセンターは2030年までに日本全体並みの電力消費に達する可能性。データ処理需要増加で米国の電力需要が重工業を上回り、補助金縮小下ではエネルギーコスト上昇が家計や消費を圧迫する懸念。
- 生産性の遅れ:過去の技術波同様、AIの本格的な恩恵獲得には時間を要する。まず労働市場の再構成が進み、産業毎に勝者・敗者が現れる展開に。
生成AIと米国政府債務への影響
今後の米国債務動向は、AIによる生産性向上と移民政策による労働供給という2つの強力だが相反する力のせめぎ合いとなる。
- ベースラインvs生産性向上シナリオ:CBOは現状想定で2055年の連邦債務をGDP比156%と見積もるが、生成AI主導で生産性が加速すれば113%まで低下し、一人あたり実質GDPは17%上昇。生産性向上が歳入増・赤字削減・債務軽減につながる。
- 債券市場への波及:高成長で資本需要増→金利上昇も、効率化によるインフレ抑制が相殺。最終的な調達コストへの影響は予断を許さない。
- AI生産性の不確実性:過去の歴史(PC・インターネット等)のように、技術革新が生産性に現れるまで数十年のタイムラグも想定される。
- 移民の逆風:米労働力の19%が移民。強硬な移民制限で労働力が年100万人減少すれば賃金・インフレ上昇とともに、GDP成長や税収の鈍化を招く。
二つのシナリオ
生成AI主導の生産性ブーム→経済成長加速・債務比率低下
- 移民制限による労働供給不足→成長鈍化・インフレ加速・財政赤字膨張
インフレ圧力の加速
米国通商政策を巡る明確な方針は未だ見えておらず、企業もサプライチェーンや投資戦略で慎重な姿勢を崩していません。主な理由:
- 交渉未完了:中国・メキシコ・カナダの関税率決定が遅延。USMCA再交渉も来年に控え、不透明感長期化。
- 暫定的な発表:多くの関税が最終合意前に発表され、今後再交渉・免除の余地あり。業界団体や政府は救済措置を強く働きかけている。
- 曖昧な合意:EUや日本とは米国投資・エネルギー調達の約束があるものの実効性に乏しく、将来の見解相違による紛争懸念も。
- 法的係争:関税の適法性を問う裁判も進行中で、逆転判決の可能性も。
- 免除・ロビー活動:業界団体による分野別救済要求が活発化し、現行関税は一時的な措置となる余地も大きい。
- 高関税ショック:60カ国超が従来の10%を大きく上回る課税対象となり、輸出・雇用・新たな再交渉(アイルランド・台湾・レソト等)への波及も注目される。
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